財政の持続可能性 ― この先10年の見通し
市自身の財政推計(令和8年1月)は、5年後の令和13年度に『活用可能基金(貯金)』が枯渇し、公債費は10年余りで倍増、対策がなければ令和16年度に市債発行が国の許可制になる『起債許可団体』に転落する、と警告する。今の決算(お財布事情)の“この先”を映す最重要データ。

背景
札幌市は令和8年1月、今後10年(令和17年度まで)の一般会計の財政推計を公表した。令和6年度決算で扶助費・職員費の増や物価高騰の影響を受け、令和8年度予算でもなお200億円超の収支不足が生じている。一般財源の歳入は緩やかに減る一方、必要な歳出は増える見込みで、市はこのままでは持続可能でないとして『内部経費の徹底的な見直しと選択と集中』に踏み出した。本課題は、現在の決算を整理した『札幌市のお財布事情』の“未来版”にあたり、市が自ら示した警告値を、市民が見える形で置くものである。
主要データ
| 推計の対象 | 一般会計・今後10年(令和8〜17年度。令和8年1月公表) |
|---|---|
| 足元の収支不足 | 令和8年度予算でもなお 200億円超 |
| “貯金”が尽きる時期 | 令和13年度(=約5年後)に活用可能基金(財政調整基金+まちづくり推進基金・土地開発基金の現金分)が枯渇する見込み |
| 公債費(借金返済) | 令和21年度に1,279億円=令和8年度比 +110.8%(約2.1倍)でピーク、その後も継続 |
| 市債残高のピーク | 令和15年度に1兆2,654億円(建設債+臨財債) |
| 危険ライン | 対策なしなら実質公債費比率が令和16年度に18%超→市債発行が国の許可制になる『起債許可団体』に転落見込み |
事実
- 市の財政推計(令和8年1月)では、令和8年度予算でもなお200億円超の収支不足が生じており、一般財源歳入は緩やかに減る一方、必要な歳出は増える見込みとされている。
- その結果、令和13年度(約5年後)に『活用可能基金』(財政調整基金・まちづくり推進基金・土地開発基金の現金分の合計=いわば市の“貯金”)が枯渇する見込みと明記されている。
- 扶助費(社会保障)は障がい福祉費・児童福祉費の増などで令和5→8年度に一般財源で約200億円増え、高齢者人口がピークを迎えるまで増加が続くと見込まれる。
- 公債費(借金の返済)は令和21年度に1,279億円(令和8年度比+110.8%=約2.1倍)でピークを迎え、その後も同程度の負担が続く見通し。
- 一般会計の市債残高(建設債+臨時財政対策債)は令和15年度に1兆2,654億円でピークとなる見込み。
- 対策を取らなければ、財政の健全性を示す実質公債費比率が令和16年度に18%を超え、市債発行に国の許可が必要な『起債許可団体』に転落するおそれがあるとされている。
解釈
この推計の重みは、外部の批判ではなく“市自身が出した警告”である点にある。『お財布事情』が写すのは現在の残高だが、この推計はその先――5年で貯金が尽き、借金返済が倍増し、放置すれば自由に借金もできなくなる――という軌道を示す。つまり財政の硬直化(義務的経費90%)は年々きつくなり、新しい政策に回す余地が縮む。ただし推計は『対策を取らなければ』の前提で、物価・国の税制・交付税など不確定要素も大きい。だからこの数字は“決定した未来”ではなく、『今動けば変えられる警告』として読むべきものだ。何を削り、何を守り、負担をどう分かち合うか――先送りできない選択が、ここに集約される。
提案
- 『5年後に基金枯渇』という到達点を起点に、毎年の収支改善の目標と実績を市民に見える形で管理する。
- 義務的経費(社会保障・人件費・公債費)の伸びと、投資的経費・出資団体への持ち出しを分けて点検し、圧縮余地を具体化する(→出資団体・お財布事情)。
- 起債許可団体への転落(実質公債費比率18%)を絶対防衛ラインとして、建設事業費の平準化・優先順位づけを行う。
- 負担増(受益者負担・使用料)や事業の選択と集中について、痛みも含めて早めに市民と対話する。
深掘り — 市民の声と答え
『5年後に基金が枯渇』って、具体的にどういうこと?
活用可能基金とは、財政調整基金・まちづくり推進基金・土地開発基金の現金分の合計で、いわば市の“貯金”です。毎年の収入で足りない分(収支不足)をこの貯金で穴埋めしていますが、市の推計では令和8年度でも200億円超の不足が続き、令和13年度(約5年後)にこの貯金が尽きる見込みとされています。貯金が尽きれば、穴埋めの手段がなくなり、事業の削減・負担増・借金の増加のいずれかを迫られます。だからこそ『いま収支を改善する』ことが先送りできない、という警告です。
『起債許可団体』になると何が困るの?
自治体の借金(市債)は通常、国への届け出で発行できますが、財政の健全度を示す実質公債費比率が18%を超えると『起債許可団体』となり、市債の発行に国の“許可”が必要になります。つまり、必要な投資や借り換えを自分たちの判断で自由にできなくなり、財政運営の自由度が大きく下がります。市の推計では、対策を取らなければ令和16年度にこの18%ラインを超えるおそれがあるとされ、これは避けるべき絶対ラインとして意識されています。
じゃあ、どうすれば止められるの?
魔法の一手はなく、『歳出を抑える』か『歳入を増やす』か、その組み合わせです。歳出側は、増え続ける社会保障(→社会保障費)や借金返済に手をつけにくいぶん、投資的経費の平準化、出資団体への持ち出し(→出資団体)や事業の選択と集中が焦点。歳入側は、税収の維持・拡大や受益者負担の見直し。いずれも痛みを伴うため、『何を守り、何を諦めるか』を数字を開いて市民と決めることが要になります。この推計は“決まった未来”ではなく、今の選択で変えられる軌道です。
検討体制・メンバー
札幌市財政局が財政推計を作成・公表。予算編成を通じて全部局に関わり、負担や事業の選択には市民・議会の合意が必要となる。
AIノート
AIの貢献度は中。収支不足・基金残高・公債費の推移をダッシュボード化し、『どの対策でいつ基金枯渇が何年延びるか』のシナリオ試算や、義務的/投資的経費の分解可視化に役立つ。ただし何を削り誰が負担するかは市民・行政の合意が本体。