出資団体の経営と遊休資産の活用(見えにくい歳出と眠る資産)
市が出資する約30団体(第三セクター)への補助金・委託料は年約490億円。損益がマイナスの団体もあり、遊休資産(未利用の市有地)も眠る。財政の余地を捻出できるか点検すべき「見えにくい歳出と資産」。

背景
札幌市は、資本金や基本財産の25%以上を出資する「出資団体」を約30持ち、公共施設の運営(指定管理)や住宅・下水道・文化・スポーツ・防災などを担わせている。これらへの補助金・委託料などの財政的関与は令和6年度で年約490億円規模(多くは指定管理の委託料)で、市の『見えにくい歳出』になっている。当期損益がマイナスの団体もあり、加えて公的利用の見込みがない市有地(遊休資産)も存在する。財政の硬直化(→市債・お財布事情)とあわせ、限られた財源を捻出する余地として、団体ごとの経営と資産活用を点検する価値がある。なお本課題は特定団体の是非を論じるものではなく、全団体を同じ物差しで比較する材料を示すことを目的とする。
主要データ
| 出資団体の数 | 約30団体(令和6年度・評価対象。資本金等の25%以上を出資) |
|---|---|
| 市の財政的関与(年) | 約490億円(補助金・交付金・委託料等。多くは指定管理の委託料。令和6年度) |
| 当期損益がマイナスの団体 | 7団体(令和6年度。株は当期純利益、公益・一般法人は当期経常増減額でみた場合) |
| 関与額の大きい団体 | 学校給食会 約92億円/住宅管理公社 約74億円/青少年女性活動協会 約72億円(いずれも委託料が中心) |
| 例:札幌ドーム | 令和6年度は純利益約4,298万円と黒字化も、営業損益は赤字で市が約1.68億円を補填 |
| 遊休資産 | 公的利用の見込みがない市有地を一般競争入札・ネット公売・公募提案型などで売却・貸付(保有地一覧・実績を公表) |
団体別の比較(令和6年度決算)
市が出資する団体を、同じ物差しで並べました。大切なのは「赤字=悪」ではなく、公共目的でやっている団体(住宅・下水道・防災など)と、収益をねらえる団体を分けて見ることです。そして市にとっての「効果」は団体の黒字ではなく、市の持ち出し(補助・委託・補填)がどれだけ減らせるかで測ります。
赤いバーは損益がマイナスの団体。金額の多くは公共施設を運営させるための委託料(指定管理料)です。
| 団体名 | 形態 | 損益 | 市の財政的関与 |
|---|---|---|---|
| 札幌市学校給食会 | 公財 | 2 | 9,176 |
| 札幌市住宅管理公社 | 一財 | 39 | 7,395 |
| さっぽろ青少年女性活動協会 | 公財 | ▲33 | 7,168 |
| 札幌総合情報センター | 株 | 142 | 6,015 |
| 札幌市交通事業振興公社 | 一財 | 64 | 4,297 |
| 札幌市スポーツ協会 | 一財 | ▲7 | 3,127 |
| 札幌市芸術文化財団 | 公財 | ▲146 | 2,934 |
| 札幌市下水道公社 | 一財 | 37 | 1,659 |
| さっぽろ水道サービス協会 | 一財 | 66 | 1,592 |
| 札幌市公園緑化協会 | 公財 | ▲1 | 1,210 |
| 札幌市環境事業公社 | 一財 | 0 | 1,101 |
| 札幌市生涯学習振興財団 | 公財 | 21 | 761 |
| さっぽろ産業振興財団 | 一財 | ▲17 | 725 |
| パシフィック・ミュージック・フェスティバル組織委員会 | 公財 | 56 | 361 |
| 札幌国際プラザ | 公財 | 10 | 342 |
| 札幌ドーム | 株 | 43 | 297 |
| 札幌振興公社 | 株 | 47 | 269 |
| 札幌リゾート開発公社 | 株 | 328 | 204 |
| 札幌勤労者職業福祉センター | 一財 | 27 | 181 |
| 札幌市防災協会 | 公財 | 7 | 102 |
| 札幌市職員福利厚生会 | 一財 | 39 | 89 |
| 札幌丘珠空港ビル | 株 | 18 | 18 |
| 北海道熱供給公社 | 株 | 102 | 7 |
| 札幌都市開発公社 | 株 | 168 | 0 |
| 札幌副都心開発公社 | 株 | 402 | 0 |
| 札幌エネルギー供給公社 | 株 | ▲12 | 0 |
| 札幌花き地方卸売市場 | 株 | 11 | 0 |
| 札幌市中小企業共済センター | 公財 | ▲8 | 0 |
| 札幌産業流通振興協会 | 一財 | - | 0 |
単位:百万円(令和6年度決算)。損益は、株式会社は当期純利益、公益・一般法人は当期経常増減額。「市の財政的関与」は補助金・交付金・委託料などの合計(多くは指定管理の委託料)。▲は赤字。
事実
- 札幌市は資本金等の25%以上を出資する『出資団体』を約30持ち、指定管理などを通じて公共施設の運営や住宅・下水道・文化・スポーツ・防災を担わせている。
- これら出資団体への財政的関与(補助金・交付金・委託料など)は令和6年度で合計約490億円。金額の大半は指定管理の委託料で、学校給食会 約92億円、住宅管理公社 約74億円、青少年女性活動協会 約72億円などが大きい。
- 令和6年度決算で当期損益がマイナスだったのは7団体(芸術文化財団 約▲1.5億円、青少年女性活動協会 約▲0.3億円、産業振興財団 約▲0.2億円、スポーツ協会、エネルギー供給公社、中小企業共済センター、公園緑化協会)。
- 札幌ドーム(株)は日本ハム移転後の大幅赤字(2024年3月期 純損失約6.5億円)から令和6年度は純利益約4,298万円へ回復したが、営業損益は赤字で、札幌市が約1.68億円を補填している。
- 一方で、都市開発公社・副都心開発公社・花き地方卸売市場・エネルギー供給公社などは市の財政的関与がゼロで、独立採算に近い運営をしている。
- 市は公的利用の見込みがない市有地(遊休資産)を、一般競争入札・インターネット公売・公募提案型売却・貸付などで活用・処分しており、保有地一覧や売却実績を公表している。
解釈
市は出資団体へ年約490億円を投じており、その多くは公共施設を運営させるための委託料(指定管理料)である。損益がマイナスの団体も約7団体あるが、『赤字=悪』ではない――住宅・下水道・防災・公園・文化など、採算より公共目的でやっている団体が多いからだ。重要なのは『黒字化で市がいくら儲かるか』ではなく、団体ごとに性質を分け、収益型は民間運営・独立採算の余地を、公共型は委託料の水準見直しや統廃合による持ち出しの圧縮余地を、平等な数字で点検すること。数十億円規模の委託が並ぶだけに、数%の効率化でも十数億円規模の財源になりうる。遊休資産の活用も、保有コストの削減と一時・継続収入の両面で財政の余地を広げる。
提案
- 全団体を同じ物差し(損益・市の財政的関与・サービス量)で毎年比較し、見える化する。
- 団体を『収益型(イベント・施設など)』と『公共サービス型(住宅・下水道・防災など)』に分けて評価する。
- 収益型は民間運営・独立採算・指定管理の競争性を、公共型は委託料水準の点検と統廃合の余地を検討する。
- 赤字団体は『市の補填・委託額がどれだけ減らせるか』を効果指標として設定する(団体の純利益ではなく市の持ち出しで測る)。
- 遊休資産(未利用の市有地)の売却・貸付・活用を進め、保有コストを圧縮する。
深掘り — 市民の声と答え
赤字の団体を黒字化したら、札幌市はいくら得するの?
出資団体の当期利益は、基本的に市の歳入には入りません(配当はほぼなし)。だから『黒字化=市が儲かる』ではありません。市にとっての効果は、市の持ち出し――補助金・委託料・損失補填・貸付――がどれだけ減るか、で測ります。例えば札幌ドームは令和6年度に純利益約4,298万円と黒字化しましたが、営業損益は赤字で、市が約1.68億円を補填しています。つまり『黒字』の中身が市の支援頼みなら、効果はその補填額で測るべきです。市全体では出資団体への財政的関与が年約490億円あり、この圧縮余地こそが『効果』の分母になります。
赤字でも続けるのはなぜ?やめられないの?
住宅管理・下水道・防災・公園・文化など、採算より公共目的で運営している団体が多く、単純に赤字=廃止とはいきません。一方で、イベント施設など収益型の事業は、民間運営や独立採算、指定管理の競争性を高める余地があります。実際、都市開発公社・副都心開発公社・花き市場などは市の財政的関与がゼロで独立採算に近い運営をしています。だから『一律カット』でも『聖域』でもなく、団体ごとに性質を分けて、公共性と採算性の両面から評価するのが筋です。
眠っている市の土地(遊休資産)はどうなっているの?
市は、事業や代替地として活用する見込みがない市有地を、一般競争入札・インターネット公有財産売却・価格公示売払・公募提案型売却・随時募集などで売却・貸付しており、保有地一覧や売却実績を公表しています。売れば一時収入、貸せば継続収入、手放せば維持管理費の削減になります。塩漬けの資産を『見える化』して活用することも、財政の余地を広げる一手です。
検討体制・メンバー
札幌市総務局(行政改革推進課)が出資団体の評価・指導を、財政局管財部が市有地(遊休資産)の管理・処分を担う。各団体は指定管理者として各所管局と連携する。
AIノート
AIの貢献度は中。約30団体の損益・市の財政的関与・サービス量を毎年そろえてダッシュボード化し、団体間の比較や『市の持ち出しの圧縮余地』の試算、遊休資産の一覧・活用状況の可視化に役立つ。ただし公共目的の価値は数字だけでは測れず、収益型か公共型かの線引きには市民・行政の合意が要る。