外国人材の受け入れと多文化共生
人手不足を背景に外国人材の受け入れが進むなか、定着と多文化共生の生活基盤づくりが追いつくかが問われる。

背景
札幌の外国人住民は2025年1月時点で約2万人(市人口の約1%)と、10年で約2倍に増えた。在留資格は『留学』が最多で、卒業後の就職・定着が鍵となる。国は2027年度から育成就労制度を始め特定技能を拡大し、介護・建設・宿泊などの人手不足を外国人材で補う方向にある(受け入れ上限案は両制度で計約123万人)。札幌市も多文化共生・国際交流基本方針(2023年策定・今後10年)を掲げ、特定技能で採用する中小企業への補助(外国人受入・定着支援事業)やスタートアップビザ補助などで受け入れ・定着を推進している。一方で、最多の留学生の道外流出、日本語・行政手続き・子どもの教育・孤立といった生活面の共生基盤は途上で、受け入れ拡大の速度に追いつくかが課題となる。
主要データ
| 外国人住民(2025年1月) | 約20,665人(市人口の約1%、10年で約2倍) |
|---|---|
| 在留資格の最多 | 留学 30.9%(次いで永住者20.9%) |
| 国の受け入れ上限案 | 育成就労 約42.6万+特定技能 約80.5万=計約123万人(2027年度〜) |
事実
- 札幌市の外国人住民は2025年1月時点で約20,665人(市人口の約1%)で、10年で約2倍に増え、在留資格は留学が最多である。
- 国は2027年度から育成就労制度を施行して特定技能を拡大し、両制度を合わせて約123万人の受け入れ上限案を示している。
- 道内の介護施設の7割超が人手不足とされ、人手確保の必要から外国人材の採用が広がっている。
- 札幌市は多文化共生・国際交流基本方針を策定し、特定技能で採用する中小企業への補助(外国人受入・定着支援事業)などを実施している。
- 2020年の外国人市民アンケートでは、日本語学習の必要性や行政手続きの分かりにくさが課題として挙がっている。
解釈
外国人材は人口減・担い手不足を補う重要な存在になりつつあり、札幌は受け入れ・定着を施策として推進している。ただし、最多の留学生が道外へ流出すれば育てても残らず、生活面の共生基盤(日本語・教育・住宅・相談)が追いつかなければ受け入れは安定しない。人手不足の穴埋めに偏れば雇用の質の低下も招く。受け入れの量だけでなく、定着と共生の質をどう確保するかが問われる。
提案
- 留学生・外国人材の市内定着の支援(就職マッチング・住宅・キャリア形成)。
- 日本語教育・多言語の行政サービス・子どもの教育など共生基盤の整備(受け入れ速度との両立)。
- 雇用の質の確保(低賃金・使い捨てを防ぐ伴走支援と監督)。
深掘り — 市民の声と答え
外国人が増えているの? なぜ受け入れるの?
増えています。札幌の外国人住民は2025年1月で約2万人(市人口の約1%)と10年で約2倍になり、在留資格は留学が最多です。背景には生産年齢人口の減少による深刻な人手不足があり(道内の介護施設は7割超が人手不足)、国は2027年度から育成就労制度を始め特定技能を拡大して、両制度で計約123万人を受け入れる方針を示しています。外国人材は、人口減を補う担い手として位置づけられつつあります。
日本全体の流れとどうつながっているの?
国は技能実習を改組した育成就労制度を2027年度から始め、特定技能と合わせて受け入れを大きく広げます。同時に、東京・大阪など8都府県では採用枠や転籍枠を厳しくし、地方からの人材流出を防ぐ方針です。札幌は全国では『地方』側で受け入れの追い風がある一方、道内では人材を集めるハブでもあり、二面性があります。日本の人口減対策としての受け入れ拡大と、地域の受け皿づくりが噛み合うかが論点です。
札幌市は何をしているの?(補助・施策)
札幌市は『多文化共生・国際交流基本方針』(2023年策定・今後10年)を掲げ、孤立防止と共生を進めています。雇用面では2025年度から『外国人受入・定着支援事業』を始め、特定技能で採用する中小企業が登録支援機関に委託する費用を半額補助し、入国前から採用後まで伴走支援します(介護・建設・外食・宿泊など)。起業ではスタートアップビザの外国人に最大30万円の補助もあります。つまり受け入れ・定着は“ビジョンに沿って推進中”の領域です。
受け入れても、札幌に定着するの?
ここが課題です。札幌は在留資格で留学が最多ですが、育てた若い人材が道外へ流出する傾向は日本人の若者と共通します(理工系などで道外就職が多い)。受け入れを増やしても、就職・住宅・キャリア形成の支援がなければ定着しません。外国人材の定着は、若者の道外流出や札幌一極集中といった既存の課題と地続きで考える必要があります。
生活の面で困っていることは?
2020年の外国人市民アンケートでは、日本語学習の必要性(約6割)や、行政窓口での言語・手続きの分かりにくさ(各約4割)が挙がり、相談先は家族・知人が中心でした。日本語教育・多言語の行政サービス・子どもの教育・孤立防止といった共生の生活基盤はなお途上で、受け入れ拡大の速度に追いつけるかが問われます。
結局、どうすればいいんだろう?
受け入れの“量”だけでなく“定着と共生の質”を一緒に高めることが要点です。具体的には、(1) 留学生・外国人材の市内定着支援(就職マッチング・住宅・キャリア)、(2) 日本語教育・多言語の行政サービス・子どもの教育といった共生基盤の整備、(3) 低賃金・使い捨てを防ぐ雇用の質の確保——を、受け入れの速度と両立させることです。人手不足の穴埋めに終わらせず、隣人として暮らせる地域づくりが目標になります。
検討体制・メンバー
札幌市総務局国際部(多文化共生・国際交流基本方針)と経済観光局(雇用・外国人受入定着支援)が中核。検討会には外国人住民の当事者、受け入れ企業・登録支援機関、日本語教育・教育委員会、札幌国際プラザ、労働・人権の専門家を加え、受け入れと共生・定着を一体で設計する。国の育成就労・特定技能の制度改正とも整合させる必要がある。
AIノート
AIの貢献度は中。多言語翻訳や『やさしい日本語』化で行政手続き・相談のバリアを下げ、生活情報の多言語提供を効率化できる。求人・求職や定着支援のマッチングにも有効。ただし共生は人と人の関係や制度設計が中心で、AIは情報のバリア低減と支援の効率化が主な役割。